ルナティック

シュテルンビルトの街に現れる謎のNEXT能力者。
ファイアーエンブレムを上回るほどの火力を誇る蒼い炎を操り、殺人犯たちを処刑していく所謂ダークヒーローである。
「法の下の正義」に従って行動するワイルドタイガーたち、ヒーローとはあらゆる意味で対極に位置する存在。


その正体はシュテルンビルト司法局のヒーロー管理官兼裁判官、ユーリ・ペトロフであった。
彼にはシュテルンビルトの伝説的ヒーロー、Mr.レジェンドの息子であるという隠された過去があった。
彼は父からヒーローとしての信条を聞かされて育つものの、父の能力の減退と共に八百長が始まり、家庭内暴力も発生。
そんな父を止めようとして殺害してしまう。


このことが彼のトラウマとなっており、
殺人犯たちを処刑して自らの正当性を主張する要因ともなっている。
こんな彼であるが、死刑制度のないシュテルンビルトの街では彼の行動を支持する向きもあるようだ。


それもそうだろう。
彼が行なっているのは、現代の諸国家が行なっている「正義のひとつ」であるからだ。
殺人犯たちを殺せ、殺し返せというのは被害者が加害者に抱く感情として至極当然であり、
死刑の執行は現代の国家及び司法に求められる業務の一つとなっている。
諸外国のように死刑執行の形は多様ではないが、
日本にも絞首刑という立派な死刑執行の形が存在し、今も尚執行されているのは日本人の大人なら誰でも知っているだろう。
友人を、家族の命を急迫不正の侵害なしに、不当に、不法に奪われても加害者に処罰感情を抱くなというのは無理な話である。
奪われてしまった命は取り戻せないが、死刑執行によって少なくとも「被害者が死の直前に抱いたであろう無念の感情」に報いることが可能だ。
少なくとも、私が被害者側なら寸毫の迷いなくルナティックを支持するであろう。


しかしシュテルンビルトの街によらず、全ての国家、都市で司法手続きを経ていない刑罰の執行は違法であるのもまた事実である。
よって彼もまた悪人の範疇に入っているのだ。
ルナティックは今もシュテルンビルトの街で自らの正義に基き、殺人犯たちを処刑している。


TIGER&BUNNYが真に終わる時、それはウロボロスの壊滅ではなく、ルナティックが司法の場に引き出される時なのかもしれない。

  • 名台詞

「救うことも裁くことも出来ない哀れなヒーロー達よ」
7話より。
罪人を裁く権利もなく、被害者を救うことも出来ないヒーローたちを評して。
法の下の正義の脆弱性を突くセリフ。


「何人も、己の犯した罪から逃れることはできない…タナトスの声を聞け」
法の目を逃れたマーベリックを処刑する際のセリフ。
何人ものファンがTVの前で「裁判官グッジョブ!」と喝采したに違いないシーン。